Job Descriptionは「みんなの味方」なんだよ

Job Descriptionは「みんなの味方」なんだよ

03.12.2025

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友人/転職検討者:「HRでキャリアを積みたいの」、私:「HRで何をやりたいの?」

なぜか冷たく聞こえてしまう私の質問…この空気感、伝わります?と聞いてもポカンとされるHR Business Partner(HRBP)のKAIです。今回はEmployee Handbookに続いて「Job Description(JD)って味方なんだってば!」という叫びを綴ります。
※下のほうでJDについて触れているのですが、そもそも叫ばれても「JD」が何かわからないまま読み進められないという方に:
JDとは組織内の各ポジションの業務・責任範囲、組織の期待値や求められるスキルセット・経験などが明記されているものです。

皆さんは「Human Resources(HR)」と聞いて何を思い浮かべますか?日本語の「人事」ではどうでしょう?採用をイメージする人、労務管理を想像する人、戦略人事の領域を思い描く人(いたら嬉しい)、いろいろだと思います。HRに限らず、日本にいるとどんな仕事にも「世間のイメージ」みたいなざっくりとしたものがあることに違和感はないのですが、アメリカで生活しているとなぜそのようなざっくりのイメージがこのアメリカでも存在するのが不思議なくらいです。

例えば企業に応募すると自動返信メールでの「応募ありがとう」という通知からスタートし、面接に進む場合はRecruiting Coordinatorが日程調整を担当。そして面接はそのCoordinatorではなくRecruiterが実施します。そして実際の採用担当者との面接を終えると、HR Generalistまたは別のHR担当者が福利厚生の説明を行う。こういった流れ、米国での就職・転職経験がある方なら一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

経験のない方には、カスタマーサービスへの問い合わせの例はいかがでしょう。担当領域が明確に分かれているため、正しい窓口にたどり着ければスムーズですが、間違えると「別の部署だから」と振り出しに戻される。別の窓口としてもらったはずの番号も繋がらなかったりの踏んだり蹴ったり。で、選択肢という選択肢を経てやっと行き着いた先は自動音声の「Thank you」とともに電話が切れる結末…ありますよね?(日本でも似たようなこと、ある気がしますが、それはさておき。)

「個」と「役割」が明確なアメリカ

「スペシャリスト」を求めるアメリカと「ジェネラリスト」が求められる日本
でもこういった事象にはしっかりと理由があるんです。
ここに繋げたかった長い前置き:アメリカでは「JD」によって役割分担がはっきり決まっています。(やっとJDの話にたどり着いた…というため息は聞こえないふり)。

日本では「〜部」「〜課」「〜係」といったグループ単位の組織構造が一般的で、個々の役割が明確に見えず、ポジション/タイトルは部長などの「役職名」のみで「個」が見えない状態が一般的です。一方アメリカでは、Department(部門)やDivision(事業部)に明確なポジションが配置されていて、新卒であっても個別のタイトルが与えられます。つまりグループとしての構造はありつつも、個々の役割が明確に定義されている状態です。

アメリカでB2Bのサービスを受けたことがある人なら、この違いを実感しているかもしれません。契約締結前、契約締結後、サービス利用開始時、サービス利用開始後…とステージ毎に異なる担当者へバトンタッチされていく「華麗なるリレー方式」が採用されていますよね。まさにこれこそ見事な業務の細分化を図りながらのEnd-to-Endのサービス。日本にもEnd-to-Endの日本語訳(私の中では類義語)的に「一気通貫」の概念はありますが、同じ担当者が一貫して対応するケースが多い印象です。アメリカのようにここまではっきり分かれていると、日本のように「〜部」だけで成立させるのは難しく、社内外において誰が何を担当しているのか明確になっていないと、お客様にも混乱が生じてしまうことは容易に想像がつくと思います。

Job DescriptionJD)って一体何なのさ?

さらにここまで辛抱強く読んでいただいた皆さまに花束を!HRという領域に一種の宗教みたいなハマりっぷりでツラツラと、熱量多めですみません。題名への回帰です。冒頭で控えめに小文字で触れたように、「JD」とは各ポジションの役割を示したもの。日本語では「職務記述書」と訳されることが多いですが、完全に言い表すピッタリの表現はないように感じています。それもそのはず、そもそも日本には同等の概念自体ががほぼ存在しないので、日本企業の海外人事担当者(もしくは人事経験のない米国現地法人の責任者など)にとってJD作成は一苦労です。その結果、「業務内容」が単なる「タスク」の羅列に終始し、さらにそのリストよりも「求められる条件リスト」の方が長くなりがち…というのは、あるあるの話です。

しかし、理想的なJDにはもっと多くの情報が含まれます。例えば、組織内におけるポジションの位置付け、具体的な業務内容、責任範囲に加え、ポジションに対する期待値。さらに、それを遂行するために求められる経験やスキル、行動特性も盛り込まれています。本来、JDとは驚くほど内容豊富なものなのです。

八方美人?じゃなくて、全方位メリットづくし

慣れない「JD」という代物の取り扱いは、正直言って少々面倒に感じるかもしれませんが、定期的に見直されている「up-to-date」な状態のJDがあることは雇用主、従業員(新入社員、社内転職希望者や昇進・昇格を控える社員はもちろん)、まだ採用されていない求職者にまで!それぞれにとって大きなメリットがあります。雇用主にとっては、各部署・各チーム・各ポジションの役割を明確化&各ポジションの定期的な業務棚卸しにもなり、業務のブラックボックス化を防ぐ役割にもなります。期待値のすり合わせやパフォーマンス評価、適材適所を実現する人材戦略という観点でも重要な役割を果たします。従業員にとっては、組織内における自身の役割が明確化され部署間、チーム間の連携・役割分担が容易になります。期待値の理解、自身の現状の理解、目標設定にも役立ち、今後のキャリアパスも描きやすくなりますよね。求職者・転職者(社内転職も同様に)にとっては、業務・責任範囲が明確化されていることでスキル・経験とのマッチング度を測ることができて入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐことにも繋がります。

リストしてみてJDのデメリット、ないから(とは言わないまでも、工夫次第でむしろメリット最大化に!)

ひたすら強気にメリット攻めにしてますが、業務・責任範囲を明確化させることで逆に柔軟性の低下や責任範囲を過度に限定してしまうのではと懸念する人もいるのではないかと思います。しかしながら、JDをここまで推すだけあって、このデメリットも工夫次第ではむしろメリットの最大化に繋げることができるという秘密を私は知っています。柔軟性の低下に対しては「コア業務+柔軟対応」をモデルにしたり、「期待する成果」は明記するものの手段は細かく縛らない、職務範囲をタスクベースではなく「役割ベース」にすることで状況に応じた対応を可能にし、むしろ柔軟性アップに繋げる。私の仕事じゃないという責任範囲の過度な限定ゆえの責任範囲の曖昧化(「じゃあこれって誰の責任?」という状態)に対しては、チームでの協力を盛り込んだり、あえて他のポジションと重なりを設けて協力しやすくしたり、個別業務とチーム業務の棲み分けをしたりすることで「私の仕事じゃない」を言わせないチームワーク向上環境を整えます。採用・評価の硬直化の懸念には、すでに何度も言葉にしている「定期的な見直し」が鍵を握ります。定期的な見直し、更新で期待値のすり合わせを行い、期待と違った、頑張ってるのに評価されない、を防ぎます。もちろん評価制度・基準も漏れなく見直しが必要です。

「JD」はガチガチのルールではなく、適切に運用すれば組織を強化し、個々の成長を後押しする強力なツールになります。どう活かすかは設計次第。せっかくの「味方」活かさない手はないのではないでしょうか。「何からやればいいかな?」「時間ないな」「やりたいけど他の重要案件優先になってもう何年も…」と考えている方、一度私たちとディスカッションしてみませんか。

 

KAI:
自分って意外とこういう人だったんだって毎日新たな自分発見しながら、アメリカの土地と同じように壮大な人事という領域でHRBPとして日々様々な業種の在米日系企業様をサポートしています

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